【猫の目に黒いシミ?】角膜黒色壊死症|エキゾチックショートヘアの治療経過とホームケアの症例

猫の角膜黒色壊死症の治療法・症例を獣医師が解説!原因や実際の症状、回復までの経過、ホームケアを紹介

この記事では、猫(エキゾチックショートヘア/1歳5ヶ月)の角膜黒色壊死について田上先生が解説。どのようにして症状が改善されたのか、実際の症例写真をお見せしながら治療前との比較や治療経過中の状況、そして症状が回復した後の様子、ホームケアについてお届けします。

角膜黒色壊死症(かくまくこくしょくえししょう)は、角膜(黒目)の表面が黒いシミのように変色してしまう病気。短頭種のネコに多くみられる傾向があり、他の品種にも発症する可能性があります。この記事では、角膜黒色壊死症と診断されたネコ(エキゾチックショートヘア)の症例を治療法とともにご紹介したいと思います。

目次:

1.実際の症例ケース・治療前との比較

2.ネコの角膜黒色壊死症とは?どんな病気?

3.発症する原因は?

4.発症した場合の検査方法は?

5.病院で行った治療法

6.予防・再発の対策とホームケア

7.まとめ

実際の症例ケース・治療前との比較

病名:角膜黒色壊死症

猫種:エキゾチックショートヘア

年齢:1歳5ヶ月

原因:過去にネコヘルペスウイルスの感染が疑われ、潜伏感染していたウイルスが再活性化して発症

症状:角膜の表面に黒色病変が沈着し、角膜炎を併発している状態

初診:2022年12月7日

治療法:抗ヘルペスウイルス薬点眼液をメインに、補助療法として保湿治療を併用

明確な原因は解明できていませんが、ネコヘルペスウイルス感染症の症状のひとつと考えられている角膜黒色壊死症。ネコヘルペスウイルスの感染に伴い、目の表面が乾燥しやすくなります。今回のエキゾチックショートヘアは、角膜炎を起こしていたので抗ヘルペスウイルス薬点眼液を行いつつ、涙液層の構造を人工的に補う補助療法を取り入れて症状の回復をサポートしました。

2022年12月7日、初診時の状態がこちら。目の角膜表面に黒いシミのようなものができてしまい、角膜炎を起こしていました。潰瘍が深くなると痛みが出てくるのですが、このエキゾチックショートヘアは、幸いにもそこまで深くない状態でした。通院も最初の1ヶ月は月に3回と多めの来院でしたが、経過も良好でしたので2ヶ月目以降は月に一度の頻度で受診していただきました。

治療から約4ヶ月後、2023年4月6日の受診時がこちらです。他の病院で処方されていた抗ヘルペスウイルス薬点眼液を継続し、保湿治療を行いながら経過観察をしたところ、4ヶ月後には黒色病変が認められていた角膜の透明性が改善しました。

約4ヶ月で改善しましたが、その後も抗ヘルペスウイルス薬点眼液の回数を減らしながら再発しないよう経過観察をしています。ネコヘルペスウイルスは一度感染すると脳の三叉神経節に潜伏感染するため、ストレスがかかったときにいつ再活性化して症状が出てもおかしくない病気です。症状が改善しても再発する可能性があるので、経過観察が必要です。

ネコの角膜黒色壊死症とは?どんな病気?

角膜黒色壊死症は、目の表面に黒っぽいシミのような黒色病変が認められるネコ特有の病気です。できてしまった黒色病変が脱落して、黒色病変の周囲に角膜潰瘍(かいよう)が悪化して痛みを伴うことも。今回のエキゾチックショートヘアやペルシャに多いといわれていますが、他の品種にも起こる可能性があります。

発症する原因は?

角膜黒色壊死症の発症について以前は原因不明とされていましたが、近年は考えられるひとつの要因としてネコヘルペスウイルスに起因するものといわれています。

多くのネコは、生後2ヶ月くらいで母ネコからもらった抗体が切れて免疫力が低下します。そのため周りのネコからウイルスが感染し(初発感染)、その後三叉神経節に潜伏感染してウイルスを保持している状態になります。このウイルスは、ストレスなどのきっかけで再活性化して発症すると考えられています。

発症した場合の検査方法は?

角膜黒色壊死症の症状が出た場合、現在の状態を知るために検査を行います。角膜の染色検査(フルオレセイン染色)、目の表面を拡大して確認するスリット検査、涙の量を調べる涙液量測定、眼圧に異常がないかを調べる眼圧測定など悪いところがないか検査でチェックします。PCR検査(ポリメラーゼチェーンリアクション)から感染の有無を調べるケースもありますが、初発感染時に検査をすると陽性、再活性化時に検査すると陰性が出ます。

病院で行った治療法

今回のエキゾチックショートヘアは抗ヘルペスウイルス薬を処方されていたので、そのまま継続して使用。ネコヘルペスウイルス性角結膜炎の他の症状に対して、保湿点眼を併用しました。軟膏が合わないなど、体質や過去の病歴によって処方できない薬が出てくることもあるので、ネコの性格や症状に合わせた治療を行なってくれる病院を選択することも、治療をする上で大事なポイントになるかと思います。

さらにお伝えすると、角膜黒色壊死症のようなネコヘルペスウイルス感染症が原因の病気を発症した場合、治療法の中には手術という選択肢もありますが、ネコヘルペスウイルス感染症が制御されないと再発の可能性があります。さまざまな考え方がありますが、グランクリュ アニマル アイクリニックでは角膜黒色壊死症に対しては手術をしないで治療するケースが多いです。

予防・再発の対策とホームケア

角膜黒色壊死症を予防する、または再発を防ぐための対策として、一番気をつけていただきたいのが「ストレス」です。何がストレスとなるかはネコによって異なり、例えば、新しいネコがきた、引越しをした、家のリフォームで知らない人が来た……このような日常でありそうなことがストレスにつながる場合もあります。ストレスが溜まらないよう飼い主さんが気にかけてあげるだけでもホームケアにつながりますので、意識してみてください。

ネコによって過ごしやすい環境を整えてあげることが大事ですので、飼い主さんとして何がその子にとって何がストレスで何が心地いいと感じているのか、普段から観察してみてくださいね。

まとめ

グランクリュ アニマル アイクリニックに来られる前に通われていた病院で手術を勧められたというエキゾチックショートヘアの飼い主さん。病気を治したいと強く思いつつも、できれば手術を避けたいと思い、人づてのご紹介で来院されました。確かに手術という選択肢もありますが、ストレス耐性が弱いネコに手術を行うのは極力避けてあげたいものです。角膜黒色壊死症を治療したい方は、ぜひ一度グランクリュ アニマル アイクリニックへお越しください。

ちょっとした悩みや不安がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。お待ちしております!

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