【犬の黒目が白く濁っている!】角膜上皮びらん|フレンチブルドッグの治療経過とホームケアの症例
犬の角膜上皮びらんの治療法・症例を獣医師が解説!
原因や実際の症状、回復までの経過、ホームケアを紹介
この記事では、犬(フレンチブルドッグ/7歳2ヶ月)の角膜上皮びらんについて田上先生が解説。
どのようにして症状が改善されたのか、実際の症例写真をお見せしながら治療前との比較や治療経過中の状況、
そして症状が回復した後の様子、ホームケアについてお届けします。
角膜上皮びらん(かくまくじょうひびらん)は、角膜表面の上皮が部分的にめくれてしまう病気です。
痛みを伴うので目をショボショボさせたり、飼い主さんから見て黒目が白く濁っている、キズがある、曇っているといった特徴があります。今回、治療を行なったフレンチブルドッグやボストンテリアなどの短頭種に多く見られますが、他の犬種にも発症する可能性はあります。今回は、角膜上皮びらんと診断されたイヌ(フレンチブルドッグ)の症例を治療法とともにご紹介したいと思います。
目次:
1.実際の症例ケース・治療前との比較
2.イヌの角膜上皮びらんとは?どんな病気?
3.発症する原因は?
4.発症した場合の検査方法は?
5.病院で行った治療法
6.予防・再発の対策とホームケア
7.まとめ
実際の症例ケース・治療前との比較
病名:角膜上皮びらん
猫種:フレンチブルドッグ
年齢:7歳2ヶ月
原因:原因は特定できないが、強膜炎からきている可能性が高い
症状:目の角膜表面が磨りガラスのように白く濁っている状態で痛みがある
初診:2023年1月4日
治療法:治療用犬猫コンタクトレンズ、点眼薬、内服薬の投与
他の動物病院からのご紹介で来院された段階では右眼が角膜上皮びらんでしたが、治療途中で左眼も発症。治療用犬猫コンタクトレンズや点眼薬、内服薬で治療を行ない、約1〜1ヶ月半の治療期間で片眼が回復。
4ヶ月過ぎた頃には後から発症した左眼もかなり改善できました。
2023年1月4日、初診時の右眼がこちら。黒目の大部分が白く濁った状態です。
検査結果から強膜炎を起こしている可能性がありました。
傷んでいる部位がないかをチェックする角膜の染色検査(フルオレセイン染色)で確認した写真です。
グリーン部分が角膜の上皮細胞が欠損している(剥がれているような状態)部分です。
まずは治療用犬猫コンタクトレンズを装着して、痛みを緩和させることから治療スタート。
青白色のドットが入っているので、レンズが装着されているかどうか飼い主さんも簡単にチェックできます。
炎症を抑えるための内服薬と点眼薬を投与して約1ヶ月後、2月8日の様子です。
白く濁っていた黒目がうっすらと見えるまでに改善されました。
初診から約2ヶ月後、3月2日の経過状態です。
1ヶ月前の状態からさらに黒目部分がはっきり見えるようになりました。
初診から約3ヶ月後、4月5日の経過状態です。右眼はほぼ通常の状態に近いところまで改善しています。
この後に左眼も角膜上皮びらんが発症しましたが、同じ治療法を続けて回復しました。
以下のように、写真を比較して治療経過をみるとわかりやすいですね。
▲治療開始の初診時
▲治療開始から約1ヶ月後
▲治療開始から約2ヶ月後
▲治療開始から約3ヶ月後
最初に行なった治療用犬猫コンタクトレンズが外れてしまったり、左眼も発症してしまうなどありましたが、処方した内服薬で両眼とも順調に改善しました。今回は強膜炎の症状が確認できましたが、しっかり検査をして他の疾患の可能性がないか確認することも大切です。
イヌの角膜上皮びらんとは?どんな病気?
角膜上皮びらんの特徴は、角膜表面の上皮が部分的にめくれてしまうこと。磨りガラスのように白く濁ったように見えるのが特徴です。片眼が角膜上皮びらんとなった場合、後から時間差で反対側の眼も発症するケースもありますが、点眼による治療と内服薬で回復が期待できます。
発症する原因は?
角膜の硝子様変性などさまざまな要因があるといわれていますが、角膜上皮びらんが発症する詳しい原因はわかっていません。傾向として目の乾燥から起きている可能性が高く、今回治療を行なったフレンチブルドッグは強膜炎からきているようでした。
発症した場合の検査方法は?
角膜上皮びらんが発症した場合、現在の状態を知るために検査を行います。角膜の染色検査(フルオレセイン染色)、目の表面を拡大して確認するスリット検査、涙の量を調べる涙液量測定、眼圧に異常がないかを調べる眼圧測定など、悪いところがないか検査でチェック。現在の症状を悪化させる要因がないか確認するために細胞の検査を行うほか、細菌・真菌などの感染がないか調べていきます。
病院で行った治療法
今回のフレンチブルドッグは、まず右眼が発症した状態で来院されましたので、治療用犬猫コンタクトレンズを装着して角膜を保護し、痛みを緩和。青白色のドットが入った犬猫専用のコンタクトレンズですので、混濁した角膜でもレンズの装用状態の観察ができる上、きちんとレンズが装着されているか飼い主さんも視認できます。角膜上皮びらんへの治療としては、炎症を抑えるための内服薬や点眼薬を投与して経過を観察しました。
予防・再発の対策とホームケア
角膜上皮びらんを予防する、または再発の対策として、マイボーム腺の油分(脂質)を促進するためにイヌの目をパチパチとまばたきさせる方法と、まぶたを温める方法があります。ドライアイの予防になるほか、飼い主さんにもできるケアです。愛犬とのスキンシップにもなるので、日常の触れ合いを通してたくさんやってあげてくださいね。
逆に注意していただきたいのが、処方された点眼薬や薬の用法・容量を守らず誤った使い方をした場合です。心配や不安から良かれと思って使用回数を増やす(減らす)などの行為は、期待される薬の効果や安全性に影響が出てしまう可能性がありますので必ず用法・容量を守ってください。
治療法ひとつにしても、持病があって薬が使えないなど予想外の状況に遭遇することも珍しくありません。フレンチブルドッグの症例では、約1〜1ヶ月半で右眼が回復しましたが、強膜炎の可能性があったこと、そして治療用犬猫コンタクトレンズがたびたび取れてしまうというプチトラブルがありました。こうしたイレギュラーな状態をいかに早く見つけて対処できるかも病院選びの大切なポイントです。
まとめ
明確な発症の原因がわかっていない角膜上皮びらん。さまざまな要因がある中で、目の乾燥から起きている可能性があります。イヌの目は乾燥しやすくドライアイになりやすいので、目の病気を予防する意味としても、日頃からのホームケアは丁寧に行なってくださいね。
この症例のように、角膜上皮びらんだけでなく別の病気が発覚するケースもあります。少しでもイヌの眼に気になることが見つかったら、かかりつけ医に相談するなど早めの対応がおすすめです。
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Date:
2023年6月10日