【黒目に白い点?】角膜結晶状沈着物|イヌの治療回復の症例|

犬の角膜結晶状沈着物の治療法・症例を獣医師が解説!原因や実際の症状、回復までの経過、ホームケアを紹介

この記事では、ビション・フリーゼの角膜結晶状沈着物について田上先生が解説。
どのようにして症状が改善されたのか、実際の症例写真をお見せしながら治療前との比較や治療経過中の状況、そして症状が回復した後の様子、ホームケアについてお届けします。

角膜結晶状沈着物(かくまくけっしょうじょうちんちゃくぶつ)はワンちゃんによくある病気。
「しばらく様子を見てください」とかかりつけ医からいわれても、飼い主さんとしてはとても心配ですよね。
今回は、角膜結晶状沈着物と診断されたイヌ(犬種:ビション・フリーゼ)の症例を治療法とともにご紹介したいと思います。

目次:

1.実際の症例ケース・治療前との比較

2.イヌの角膜結晶沈着物とは?どんな病気?

3.発症する原因は?

4.発症した場合の検査方法は?

5.病院で行った治療法とホームケア

6.予防・再発の対策

7.セカンドオピニオンの必要性

8.まとめ

実際の症例ケース・治療前との比較

病名:角膜結晶沈着物

犬種:ビション・フリーゼ

年齢:6歳

症状:カルシウムや脂質などが沈着し、円形に近い状態で白く濁っている症状

初診:2022年 10月7日(現在は月一で通院中)

治療法:点眼薬と眼軟膏、自宅でできるセルフケア指導

症状の進行度合いによって検査方法が変わる可能性も。検査をして別の病気が発見できたという事例もあるので、気になることがあれば気軽にご相談ください!

2022年10月7日、初診時の状態がこちら。染色液を使って傷んでいる部位がないかをチェックするフローレス繊維染色で確認した写真でグリーン部分が沈着物になります。

拡大して目の状態を確認するスリット検査で見てみると、白っぽい濁りを発見。この他にも、涙の量を調べる涙液量測定、眼圧に異常がないかを調べる眼圧測定などを行いました。

治療開始から約2ヶ月後、2022年12月1日の写真。少しずつ黒目にある白い濁りが薄くなっているのがわかります。

2023年4月3日の写真。1ヶ月に1回のペースで治療を継続中ですが、白い濁りがかなり薄く小さくなりました。

▲治療前

▲約6ヶ月後(治療経過途中)

病院の治療だけでなく、飼い主さんにお伝えしたケア方法を一生懸命続けてくださったおかげで治療経過は良好です!今現在は月に一度のペースで通院されていますが、なぜ角膜結晶状沈着物が起こってしまうのか、原因や治療法を説明していきたいと思います。

イヌの角膜結晶状沈着物とは?どんな病気?

イヌの角膜結晶状沈着物は、角膜の表面に結晶状の沈着物ができてくる病気です。カルシウムやミネラル、脂質が沈着した結晶状の沈着物が楕円形や円形、なかには帯状となって目に出てくるのが一般的な症状。黒目に白い点状がある、目が白っぽく濁っている場合、角膜結晶状沈着物の可能性があります。似たような症状で「角膜ジストロフィー」と診断されて相談に来られる方もいますが、病気の種類は違います。

発症する原因は?

イヌが角膜結晶状沈着物を発症する原因は、まず目の乾燥が考えられます。ヒトは1分間に何度もまばたきしますが、イヌはあまりまばたきをしません。ドライアイなど目の病気が多いといわれる理由はこれです。

角膜結晶状沈着物になったからといって直接視力に影響するわけではないのですが、目の乾燥は沈着物がつきやすい状態になります。さらに乾燥を放置したままにするとひび割れのような状態となり角膜に痛みを伴うケースも……。例えばブロッグ塀はセメントを入れてキレイに積み上げますよね。そのセメントが何かしらの原因でヒビ割れしたりボロボロになっていたりすると、地震が来たときに壁が崩れてしまいます。角膜に沈着物があるというのは、そういう状態なんです。

発症した場合の検査方法は?

目視でも判断できるケースが多いイヌの角膜結晶状沈着物ですが、より細かな部分まで状態をチェックするためには検査が必要です。染色液を使用するフローレス繊維染色をはじめ、拡大して確認するスリット検査、涙の量を調べる涙液量測定、眼圧に異常がないかを調べる眼圧測定などを行います。

病院で行った治療法とホームケア

グランクリュ アニマル アイクリニックでは、ひと通りの検査を行って症状をチェックしたら点眼薬や眼軟膏、症状によっては内服薬で治療を行います。今回はビション・フリーゼの飼い主さんが目の沈着物に気づいて病院に連れてきてくれましたが、放置しておくと沈着物の範囲が広くなり白っぽい濁りも濃くなる可能性も。ワンちゃんによって症状も違いますので「あれ?」と思ったら、検診をおすすめします。

そしてぜひとも力を入れてほしいのが、自宅でできるセルフケア。ワンちゃんの目をパチパチまばたきさせる方法と目のまわりを温める方法があるので、飼い主さんにお伝えして実践してもらいます。どちらも簡単にできるし、1日に何回やってもOK。私もワンちゃんにやってあげるのですが、マッサージのような気持よさがあるので「もっとやって!」とおねだりしてくる子も。まばたきケアをしてあげると、他のワンちゃんが寄ってきて「ボクもやって」と見つめてくることもあります(笑)このまばたきケアは飼い主さんとワンちゃんのスキンシップにもなるので、回数を気にせずどんどんやってもらいたいくらいです!

予防・再発の対策

イヌの角膜結晶沈着物を予防する、そして再発させない対策としては、マイボーム腺の圧迫という処置があります。どのワンちゃんもまぶたに脂が詰まりやすいので、その脂を絞り出してあげる方法がこちらになるのですが、痛くないように行いますのでご安心ください。マイボーム腺を圧迫して脂を取り出すことで、まぶたの炎症が取れて目の状態が良くなり表面がキレイに。これを定期的にやってあげると予防になると思います。

セカンドオピニオンの必要性

症状にもよりますが、イヌの角膜結晶状沈着物は角膜ジストロフィーなど別の病名で判断されたり「治らない」「様子を見て」と診断されるケースも少なくありません。そもそも角膜結晶状沈着物と間違えられやすい角膜ジストロフィーの原因は遺伝性疾患です。シベリアンハスキーやビーグルに多く、私も一度だけシベリアンハスキーの角膜ジストロフィーを見たことがあります。角膜結晶状沈着物の多くは乾燥が原因であり、どの犬種にも発症する可能性があるのです。「この犬種だから大丈夫」というわけではありません。

獣医師向けに発行されている書籍の情報だけで足りない場合は、ヒトの医療書を参考にすることも。飼い主さまが大切している子たちが元気になるよう、自分の知識や経験をもとに別の情報にも目を向けて病気に対する治療を考えることはとても大切です。そこから最適な治療法が導き出されるケースもありますので、あきらめないでくださいね!

まとめ

今回ご紹介した犬の角膜結晶状沈着物は、ケアを怠ったりやめてしまうと再発する可能性があります。だから飼い主さんが毎日ケアしてあげることは、本当に大切なんです。ワンちゃんの様子がいつもと違うと思ったら、セカンドオピニオンを受けてみるのも一つの選択肢。治療できる可能性がある!とプラスに考えて受けてみてくださいね。

どんなに小さなことでも心配や不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。お待ちしております!

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